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夢がなくたっていい。死ににくい国、とにかく生きる―仲村あかね

昨今、夢を持たない若者が増えていると言われています。情報過多社会と言われる今日、自分の立ち位置はどこにあるのか、そもそも自分はどんな存在なのか、そんな根本的な悩みを抱えているのかも知れません。

今回お話を伺ったのは、札幌大谷大学4年生の仲村あかねさん。彼女は、芸術学部美術学科の日本画専攻。しかし、就職内定先は、芸術とは全く異なる職種なんだとか。

そこには、就職活動をする学生だからこその悩みがありました。「芸術は趣味で終わらせることなく、生涯携わっていきたい。ほとんどの物事は、自分の一念で変えられるから」と話す、仲村さん。

彼女はどんな若者であり、どんな学生なのでしょうか。覗いてみることにしましょう。

日本画専攻のわけ

札幌大谷大学芸術学部美術科「造形表現領域」には、油彩専攻・日本画専攻・版画専攻・立体専攻 の4つがあります。祖母の家が日本文化にあふれていたことに強く影響を受け、幼少期より日本の伝統文化に興味があったという仲村さん。

その後月日は経ち、勉学には腰が入らない、美術の道に進む気はない、と考えていた仲村さんは、ご両親の影響もあり、建築系への進路を考えていました。しかし、ある日転機が訪れます。

仲村さんが高校2年生の時、ある日本画作家の展示会に足を運んだ際、展示されていた絵画それぞれに心打たれ、その瞬間、彼女の中で何かが光ったといいます。そして、大学入試時には、「日本画をやる」と心に決めました。

芸術を学ぶ学生として、現在の自分が表現したいもの

幼少期、石集めを行っては、父親と石の建物を組み立てて遊ぶのが好きだったという仲村さん。いつの日か、そこらに散らばっているただの石にも、それぞれ表情があるのだと子どもながらに感じるようになりました。大学の講義で提示される課題においても、「朽ち始めているもの」「風化しているもの」に直感的に惹かれることが多かったそうです。

そして、仲村さんは、自分で描いたある一枚の絵画を機に、自分が描きたいものは、「無機質なもの」であることに気づきます。それも、「できたての無機質なものでなく、風化したものや、朽ち始めている無機質なもの描きたい。これまでの学びを通して見つけ出した答えですね」と仲村さん。この先、彼女の手から生み出される芸術には、多くの可能性が秘められていると感じました。

就職活動をした理由

これまで、「芸術に携わる仲村さん」を追ってきましたが、彼女もひとりの学生。現在大学4年生である仲村さんは、周りの大学4年生と同じように就職活動に取り組みました。その結果、得た内定は芸術とは全く別の職業。そこには、どのような理由があったのでしょうか。

「デッサンの予備校の通っていた時の先生に『京都は、芸術を学ぶなら良い所だよ』と伝えられました。もともと京都府の大学に行こうと思っていたので、京都府の大学院への進学を考えていました。でも大学3年生の時、見学のために京都まで行ったんですけど、思っていたものと違ったんですよね。そこで、いまの大学内で学べることを学び切ろうと、新たな進路を決めたんです」

夢と現実。現実に屈しない「野望」とは

大学院に進学しないと決めた仲村さん。その後は不安も募る中、就職活動と向き合うことになります。就職内定先が、芸術と全く異なることについてはどのように考えているのでしょうか。

「やりたいことはあります。でも、これからの人生は自分の手足で生きていくことになりますよね。『安定』と『時間』を確保できる職とは何かと考えたとき、現在の就職内定先に決めました」

そして、現在の仲村さんが描く未来予想図についても話してくれました。

「さっきお伝えしたように、これからは自分の手足で生きていかなくてはなりません。なので、仕事は仕事で適当にやることなく全うしたいと考えています。ですが、自分の野望、『芸術』は趣味で終わらせたくないです。でも、絵を描きたいというだけではないんですよ。今、自分にはいろんな枝があると思っていて、どれにしようかと考えているところです。好奇心の幅も、子どもの頃よりかなり広がったように思います。仕事の空いた時間に色々なことに取り組みたいですね。そうすれば、自然と自分が心からやりたいと思うことが見えてくると思うので。今ここにいるのは、芸術における自己表現だけを学ぶためにいるのではなく、日本の伝統文化そのものに興味があるからです。なので、将来的にも『絵で表現する』ということでなく、芸術というフィールドに『携わって生きたい』という気持ちが強いです」

そんな仲村さんに、ふたつの質問をしてみました。

――現代の若者は、夢を持たない。自分のやりたいことが見えず、無気力な学生や若者が多い。などと言われています。仲村さんから現代の若者に対して、ひとりの学生という立場から伝えられることはありますか?

「確かに、今日の社会の目まぐるしい変化によって、夢を持てなくなった若者たちは多く存在するでしょうね。でも、やりたいことが見つからないことは悪いことではありません。たとえ自堕落な生活をしていると自分で感じていても思考は止まっていないはずです。その止まらない思考の中で、大小はあれ、やりたいと思うことができた時に、始めれば良いのではないでしょうか。日本は、死にたくても死ねない国になったと思います。それならば、『とにかく生きること』が一番大事なのでは。とにかく生きていれば、途絶えることはないわけで、何らかのイベントが発生するはずです」

――仲村さんが自分の中で、大切にしている考え方や価値観はありますか?

自分の一念で、いくらでも物事は変えられるということですね。自分でできない、やれないと思っていては変化しません。先ほどやりたいことが見つかった時に始めれば良い、と伝えましたが、その時に大事なのは、言葉の通り気持ちを行動に移すことです。せっかくやりたいと思うことが見つかったなら、行動してみないと。自分が本気でやりたいと思うものが見つかった時は、自然と体が動いてしまうこともあると思います。大事なのは、自分の一念です。」

「夢」と「現実」を真正面から捉え、ひたむきに生き抜こうとする仲村さんの姿は、現代の学生や若者の心に響くものがあるのではないかと感じました。これからの仲村さんの活躍を、見届けていきたいですね。

撮影:大須田遼

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