技術と芸術で医療の現場で勝負する「歯科技工士」という仕事 ~Part1~

まずは歯科技工士の仕事を体感してみる!

 

歯科技工士という職業名は、きっとほとんどの人が耳にしたことがあるはず。では、実際に歯科技工士の仕事って、どんなことをするのでしょう? 「歯医者さんとは異なるんだよね?」「何か歯に関するものを作ってるんでしょ?」……などなど、漠然としたことは答えられても、具体的な仕事内容に関しては意外と知られていないものです。そこで歯科技工士のあれこれにグッと迫り、どんな職業なのか、2回にわたって探ってみましょう。まずは、実際に患者となって体験しちゃいますよ!

 

歯科技工士とは、日本歯科技工士会の公式サイトによると「歯科医療の一端を担う専門職」とあります。具体的には「歯科医師の指示書にしたがって、入れ歯、歯の被せ物、歯の詰め物、矯正装置などの作成や加工、修理を行います」、さらに「高度な精密技工技術とともに、患者さんごとに異なる歯の色や形を把握する繊細な審美感覚が求められる仕事です」とも……。 分かりやすい説明で、なんとなくイメージできますね。しかし、やはり百聞は一見にしかず! 実際に患者となって、歯科技工士の仕事を間近に体感してみましょう。

訪れたのは、札幌市中央区にある「神宮前歯科クリニック」。 まずは歯科医師による初診カウンセリングが行われ、患者の症状や悩みを詳しく聞き出していきます。ちなみに今回の患部は「下顎左側6番と呼ばれる奥歯が折れ、インレーという銀色の詰め物が取れてしまい、大きな穴が空いた状態」ということでした。

 

▼ 訪れた神宮前歯科クリニック

 

カウンセリングに続き、口腔内の検査が行われます。症状によって、虫歯の検査、レントゲン検査、歯周病検査、口腔内写真など、さまざまな検査があります。検査が終わると、口の中の状態がどうなっているのか歯科医師より説明を受け、最適な治療計画を相談します。ここで、ひとつの大きな選択肢が! 歯に被せるものや入れ歯には、健康保険が適用されるものと健康保険適用外のものがあります。どちらを選ぶかは、患者次第。今回は健康保険適用外のセラミックスの奥歯にすることにしました。

 

▼ 口腔内の検査

 

ここから、決定された治療計画に基づき、実際の治療がはじまります。多くの人が経験したことのある「歯医者さんに通う」という行為ですね。歯石を取るなどのクリーニングも行ってもらい、なんとなくスッキリした感覚。何度も通い、歯根の治療も行っていきます。 ある程度歯根の治療が完了したところで、いよいよ上に被せる補綴物(ほてつぶつ)のセッティングに入ります。歯を削って形成し、まずは「コア」と呼ばれる土台作りからスタート。穴が空いている部分を、柔らかいガムのような触感の印象材で型取りします。よく知られている印象材はピンク色の「アルジネート印象材」と呼ばれるものですが、今回は保険適用外で、より精度の高い「シリコン印象材」も併用しました。この印象材に石膏を流し込みます。

 

▼コアを作るための模型

 

石膏を流した型と歯科医師による指示書がクリニックから技工所に届けられ、いよいよ歯科技工士の出番がやってきました! 歯科技工士は石膏を削り、コアの模型を作ります。コアの素材はいくつかありますが、今回は白い材料の「ファイバーコア」を選択。ここで歯科技工士は、コアの形に合う「テック」と呼ばれる仮歯も製作します。

▼歯科技工士がコアを製作する

(取材協力/写真提供:和田精密歯研株式会社)

 

▼製作されたコアとテック

 

歯科技工士によって作られたコアとテックは、クリニックに届けられ、患者の口腔内にセッティングされます。この時、咬合紙(こうごうし)を使って噛み合わせなどを細かくチェック。「はい、カチカチしてくださ~い」と言われる、あの作業です。さらに今回は保険適用外ということで、歯科技工士がクリニックを訪れ、実際の歯の色を確認していきます。患者と歯科技工士が顔を合わせる、貴重な瞬間です。

 

▼ 歯科技工士が来院し患者の全体の歯の色を確認する

再び、作業は技工所へ。コアセッティングが終わった状態の石膏が届けられ、補綴物の模型を作ります。先述した通り、今回は補綴物の素材にセラミックスを選択したので、歯科技工士はセラミックスの粉と水で歯の形を作り、それを「ファーネス」という専用の炉で焼き上げます。焼き上がったら、リアルな歯に見えるよう削ったり艶出ししたりして、ようやく完成!

 

▼焼き上げる前は色が分からないので長年の経験と技術でセラミックスを盛り上げる

歯科技工士によって作られた補綴物がクリニックに届けられ、患者の口腔内に装着していきます。左右のサイズが合っているか、高さは合っているか、細かくチェックしながら削って微調整を行います。歯科医院での微調整後の補綴物は、さらに技工所で形を整えて、これで本当の本当に完成! 最終的に完成品がクリニックで患者にセッティングされ、ようやく治療が終了するのです。

 

▼ 歯科医院に届けられた完成品

 

▼完成品の最後の調整

 

歯科医師と歯科技工士の細かな連携があってこそ、患者の治療が完了するのだということが、よく分かりました。最後に、歯科医師から見て歯科技工士とはどんな存在なのか、伺ってみました。

「私たちにとって、必要不可欠な存在ですね。患者の噛み合わせを共に作り上げていく協力者であり、私たち以上にアート性が求められる職業だと思います。歯科技工士は基本、患者と直接会うことがありません。私たち医師は間に入る通訳者なので、歯科技工士にいかに的確に伝えるのかが重要だと思っています」(神宮前歯科クリニック・工藤昌之理事長)

 

▼神宮前歯科クリニック工藤昌之理事長

 

「アート性が求められる」というのは、歯科技工士という職業のひとつのキーポイントかもしれません。次回は、実際に歯科技工士として活躍している人にいろいろとお話を伺ってみましょう。

 ▶︎技術と芸術で医療の現場で勝負する「歯科技工士」という仕事 ~Part2~

神宮前歯科クリニック 院長:工藤昌之
所在地:〒064-0959 北海道札幌市中央区宮ヶ丘1丁目2-1
TEL:011-631-0010(随時急患受け付けています)
診療時間:月・水・木・金/10:00~20:00、火・土/10:00~18:00
休診日:日曜・祝日
※駐車場 6台分完備 (三箇所駐車可能)、地下鉄東西線「円山公園駅」「西28丁目駅」より徒歩7分
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