インタビュー

【後編】芸術の力で地方再生を―フラワーアーティスト 野咲シンジ

札幌の歓楽街すすきのを見下ろすバー「Music Lounge Brave+」。

店主であるピアニストの田中K助が今回カウンターにお招きしたのは、フラワーアーティストの野咲シンジさん。北海道出身ながら東京の一流ホテルでお花の修行を積んで独立した「お花のプロフェッショナル」です。

「芸術の力で地方再生を」という思いから、失われゆく自然や廃墟でご自身の作品と音楽、ダンス等の様々な芸術を融合させて空間を演出する「レナートプロジェクト」を主催する野咲さんの人生、そして「文化人 野咲シンジ」が考えるカルチャーについて語りました。

前編中編はこちらをご覧ください。

苦悩の末に選んだ「独立」という選択肢

中編では東京での修行期間の苦労を伺いました。思いのほかハードワークだったんだな、と。

 

ただ夢中に仕事していたという印象ですね。

 

今は独立してアトリエを構えていらっしゃいますが、どんなことがきっかけで独立されたのですか?

 

北海道に帰ってきて恩師の紹介で札幌の花屋さんに勤めたのですが、東京とのギャップがありすぎて全く面白みを感じなかったんですね。

 

それはレベルの差ということですか?

 

はい。それに花屋さんが作る花って「かわいい」が一般的なんですよ。僕にはかわいい花が作れなかったし、それを良いとも思わなかったんです。結局、札幌に帰ってきてから入社した花屋さんに半年、その後に入社したブライダルの花屋さんも半年で退社しました。

 

つらい時期ですね。花を辞めようとは思わなかったんですか?

 

実はその後、花の仕事を辞めて別の仕事をしていたんですよ。どうしていいか分からなかったんですね。そこで父親に「自分でやってみればいい」と言われまして、意を決して独立に至りました。

 

私の周りで独立してフリーランスで働いている方々は、本当にみなさん苦労してらっしゃいますね。悩んだ結果、譲れないもので勝負をかける方々ばかりです。

 

まあ、K助さん自身がそうでしょうからね(笑)。

 

「空間」と「流れ」を意識した作品

先ほども話に出ましたが、野咲さんの作品は一般的に花屋さんに抱きがちな「かわいい」というイメージからかけ離れた「カッコいい」という印象です。そういったインスピレーションはどこから得るのですか?

 

まず、僕は同業者の作品に影響を受けることがないんです。

 

私も一緒ですね。他のピアニストに影響を受けることはないです。映画とか、自然の風景とか、野咲さんの作品からも影響を受けますよ(笑)。

 

ですよね。僕も他の花屋さんの作品を見に行くことはないです。でも唯一生け花だけは見に行くんです。作品を作る時に僕が意識するのは生け花にある「空間」と「流れ」なんです。

 

「空間」と「流れ」ですか?

 

空間……例えば空気が流れる場所を作るというか、上からこう……自分の作品について解説するって難しいですね(笑)。

 

ですよね。でも対談なので喋ってください(笑)。

 

例えばこちらの作品なんですが。

 

あ、これ、私が好きな作品の写真です!

 

これは赤と黄色の花を使ってるんですが、実はこれ、手前を低く奥に行くにしたがって高く作っていて「成長」を表しているんですよ。一番向こうで花開いているイメージですね。

 

おお、すごい! カッコいいです。なぜこういう作品にしたのですか?

 

この場所のスロープと、外の蔓が建物の柱に絡まっているのを活かしたくて、……まあ、直感ですよね。

 

やっぱり直感なんですね(笑)。

 

あとはK助さんが待ち受け画像にしてくれているこちらの作品ですが。

 

 

本当にカッコいいしパワーのある作品ですね。手を加えすぎずに自然を活かしている感じがします。

 

右側の大きい括りと左側の括りの間が「空間」になりますね。「流れ」は……うーん、まあ、あるんですけど分かりにくいというか。

 

なんか、さっきから「流れ」が分かりにくいんですが。

 

いやいや、あるんですよ! ちょっと待ってください、分かりやすい作品を出しますから!(笑)。

 

これは金の水引で上からの流れを作っています。

 

おお、すごい! これは流れが分かりやすいですね! 全体が連動しているというか、独立した3つの花がひとつの作品になっている気がします。

 

そうです。この水引があることで動きが生まれるんです。

 

これはどういう意識で生まれた作品なんですか?

 

……うん、直感ですね。

 

これも直感かい(笑)。

夢は世界遺産を舞台にした花作り

私、野咲さんの作品から感じるパワーが本当に好きなんです。スマートフォンを見るたびに待ち受け画像に元気付けられるというか。それってすごいことだと思うんです。

 

それが僕の目的ですね。もちろん仕事ですからお金のために作っているのは間違いないんですが、「ありがとう」って言われるの、すごく嬉しいんですよね。もちろん仕事の大小はありますが、それに対して注ぎ込むエネルギーは変えてないつもりです。

 

と言うか、手抜きってできないんですよね(笑)。

 

手抜きの仕方を知らないんですよ。それで自分の価値を下げたくないんです。

 

例えばギャランティの少ない仕事で手抜きしようとしても「これで俺の実力が評価されるのか」と言う思いがよぎって、結局全力でやってしまいますよね。

 

そう、手を抜いた作品で「これがシンジの作品か」って思われるのが嫌なんです。全ての作品で「さすが!」って言われたいんですよね。みんなに「ありがとう」と言われたいんです。幸いにも僕はそう言う仕事をしているので。

 

最後になりますが、野咲さんのこれからの夢をお聞きしてよろしいですか?

 

僕はやはりレナートプロジェクトですね。アスファルトをぶち破るくらいの強い生命力を持った植物をモチーフにして、K助さんの音楽と言う時間芸術とコラボして、まだ知られていない自然や廃墟などの北海道の風景を紹介していきたいです。

 

花にはない時間、音楽にはない視覚をそれぞれ補完するプロジェクトですからね。結局、面白いことをやりたいんですよね。自分たちが持つノウハウで、いかに面白いことができるかと言うことだけです。

 

まさにそうですね。

 

これからレナートでやっていきたいことってありますか?

 

レナートはフランス語で「再生、復活」と言う意味ですからね。そういう意味では世界遺産でレナートをやってみたいです。

 

おお、いいですね。ちなみにどこですか?

 

一番やってみたいのはマチュピチュですね。僕、マチュピチュ大好きなので。

 

私、南米の神話が大好きなんですよ。ビラコチャの伝説とか。夢が広がりますね。

 

そうですね! ぜひやりましょう!

 

ひょんなきっかけでフラワーアーティストを目指し、様々な苦悩を経験しながら独立した野咲シンジさんは、まだまだ夢の途中と言わんばかりに大きなパワーを秘めた作品を生み出し続ける熱い文化人でした。

(撮影:ヒロカワイ)

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田中K助