コラム

出身者が語る。「世界一双子の多い学校」というものが日本にあった。

第八夜 にてるかたちの、おともだち

私が通っていた高校は、ギネスブックとリリーフランキーさんの『美女と野球』に載っている、世界一双子の多い学校だった。

偶然そうなったのではなく、研究のためにあえて双子用の受験までもうけていた研究校。
私服で校則もゆるい学校だったから、制服も髪型も一緒で見分けられない! なんてことはなかったけれど、仲良くなるまでは、なかなか見分けるのにも骨が折れた。

だって、ふつうの状況なら1組だけ覚えればいいところを、1学年120人のなかに20組くらいがいたものだから!

双子はそれぞれ違うクラスに割り振られて、あっちを呼ぶとこっちも振り返るから、だいたいの子は下の名前で呼ばれていた。

わざと間違えて呼んでみるいたずらが嫌味じゃなかったのは、ものすごくたくさんの双子がいたからだと思う。
(自分だけがそうやっていじられてたら、絶対怒ってたと思う。なんで自分だけ!? って)
からかわれてるのを見ながら、なんか、いいなあ。これってキャラだよなあと感心していた。

そうやって、当たり前に双子がいたから、当然好きな人が双子なんてこともあった。
双子に挟まれて下校することもあったし、5年くらい口を利かなかった双子もいた。
マンガみたいなシチュエーションだらけ。なんだかおもしろそうね、と周りから言われる。うん、面白かった。

ただ、逆にそういう環境にいたからこそ、自分へのコンプレックスも浮き彫りになった。

「もし自分が双子だったら、同世代の中にポツンと1人でいても、孤独な気持ちにならなかったんじゃないか?」

女の子らしく1つのグループで過ごし続けることや、親友という言葉が苦手だった。
孤独を感じやすくて、悲劇のヒロインぶりたい年頃だった私は、どんな場所にいても、ああ、自分は一人だとふと思って寂しくなった。

多分それは、うまくできない自分と向き合うのが怖かったからなのだけど、
双子の子たちが、違うクラスでも、違うグループでも、なんだかんだでお互いのことを意識しあって、心配しあっているのを見て、ものすごくうらやましかった。
あれって、家族だからこそでしょう、って。

あの2人、喧嘩してるらしいよ、と言っても、しばらくすると2人で帰っているのを見かけたり、
あの2人、お母さんの誕生日プレゼントを2人で買いに行くんだって、と聞いたり、
あの2人、もうずっと話してないんだって、と聞いていた子たちが、卒業間近にみんなの前で仲直りしているのを見たり。

全部全部、「家族だけど同級生」な2人だから起きた、奇跡だった。
もうそれが、私はたまらなくうらやましかった。

双子だったら、何がしたい?
男女の双子は、男の子のほうのグループと女の子の方のグループも一緒くたに顔見知りになって、楽しそうだった。
女子同士の双子は、ファッションの好みを合わせるか変えるかで頭をひねっていて、大変そうだった。
男の子同士の双子は、一心同体かまったく口を利かないかの両極端で、男の子という感じがした。

でも全部、一生、絶対に嫌いになりきれない2人の間で起こることで、
それって、友達なんかよりも、ふつうの兄弟よりもずっと強い絆のように見えていた。

「双子の苦労も知らないで!」

きっと高校時代の同級生たちは、こんな私にあきれるだろう。
だけど私にとってそのくらい素敵なものだった。

大学に入って、双子が周りに2組しかいなくなって、
社会に出て、1組も周りにいなくなってしまった今でも、ふと、思ってしまう。

私、来世はやっぱり双子に生まれたい。

世界一双子の多い学校
東京大学教育学部附属中等教育学校

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皐月彩