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「双子だから」と狭められた道で、凛とする女性たち。

彼女がいたからできなかった、でも、彼女がいたから、生きていけた。

「街で学生とかを見ると、なんだか元気で驚くの。別の世界の人たちみたい」

彼女たちは言った。彼女たちは美しい双子の姉妹だった。
見慣れたからか私は彼女たちを間違えて呼ぶことはなかったけれど、あまり彼女を知らない人たちにはやっぱり間違えられることもあるらしい。

頭もよくて、スポーツもできた。実家が道場を営み、文武両道を絵にかいたような美女姉妹は、私のあこがれだった。

きっと大物になるねと両親も言っていた。そんな彼女たちが、なぜ、高卒の道を選んだのか。
それは彼女たちの「双子に生まれた」という宿命にあった。

双子は単純計算で、費用が二倍かかってくる。
生活費も二倍、学費も二倍、だから国立の中高一貫に彼女たちは入学し、学んでいた。

部活も、母親が保護者の集まりに行ったり、大会に行くのに大変だからと同じ部活に入るように言われている双子が多かった。彼女たちがどうだったかは分からないけれど、同じようにソフトテニス部でいつも二人活動していた。

その姿は仲良しの双子、という感じで、はたから見ているととても羨ましかったけれど、彼女たちはいつも私にこう言った。

「ああ、彩みたいにさ、一人っ子に生まれたらよかったのに」

彼女たちには弟もいた。
彼女たちには、生活という枷があった。

一人っ子ならね、大学に行きたいってなって、頑張って国立に受かったらもうけもの。
でも、最悪私立に行くことになっても、学費は一人分。
うちはそうなってしまったら、とても家計的に回らない。
それに私たちには弟がいるから、兄弟の養育費のために貯めているものがあるにしても、彼の分をどうにか残してあげたいと考えると、私たちが一年で二人分の費用を使ってしまうのは、とてもじゃないけどできないって思ってるの。

その話をされた時、自分が親にどんなに甘えてきていたんだろうと思った。

ああ、姉がいなかったら、妹がいなかったら、もっと私は自由だったかもしれない。
そんな葛藤を日々彼女たちは愛する姉妹に抱えながら生きてきたのだ。

一人っ子だったらね、好きな洋服を買ってもらうの。
一人っ子だったらね、自分の部屋を好きなように飾るの。
一人っ子だったらね、習い事とかも、いろいろやってみたかった。
一人っ子だったらね、行きたい大学とかに悩んで、そこでかっこいい男の子と恋に落ちるの。

彼女たちはもしもの話をするときにとても目を輝かせていて、どれほどそれがやりたかったことだったのかがハッキリとみて取れた。

けれど、彼女たちは高校を出たら働く覚悟を、その話をしながらすでに決めていたのだ。
私より、彼女たちはうんと大人のように感じた。

彼女たちは高校を卒業してすぐに公務員になった。
皆が大学受験の勉強をしたり、それを終えて遊んだりしている中で、彼女たちは公務員試験に向かっていつも分厚い参考書を片手に勉強していたのが印象的だった。
学校の勉強だけではなく、一般常識(スポーツの話題まで!好きじゃなくても覚えてたりするものなのだろうか?)も出題される試験内容は、当時の私からすると大学受験よりうんと難しそうに見えた。

そう、彼女たちはとても賢い女性だった。

この人たちは、生きるために学ぼうとしている。
なんてカッコいいんだろうと思った。

そういうと、大げさだよと笑われて、あまり相手にされなかった。
学生を見ると子どもに感じる。それは、彼女たちがすでに自立した心を持っていたからに違いない。

彼女たちに久々に会ったのは、私が大学に入って三年、彼女たちが社会人になって三年目の冬だった。
仕事終わりの彼女たちは別々の役所から待ち合わせ場所にやってきた。
大人の女性らしい身なりで、店にいる同い年の学生たちとは違う雰囲気をまとっていた。

他に変わったのは、一人っ子だったらよかったのに、という話がでなかったこと。
彼女たちと同じように高校を出て公務員になった同期たちとの話や、年上なのに後輩として入ってくる大卒の人にいつもミスをされて困ってしまうこと、職場にはおじいさんばかりで出会いがないのよ、という悩み。
双子ということは社会に出て過ごす場所が離れてしまうとそれほど感じなくなってしまったらしい。

今ね、妹は、ずっと彼氏ができなくて悩んでいるらしいの。
今ね、姉は、好きだった人と結婚するかもしれないってソワソワしてるらしいの。

こっそり間に座る私に嬉しそうに話す彼女たちの姿は、運命共同体として支えあっている素敵な家族そのものだった。

同じ境遇に悩み、同じく覚悟を決めて未来を歩んだ二人は、最強の味方をもって社会に繰り出した。

きっと、今だって学生とすれ違う時に、ああ、いいなあと思うのかもしれない。

けれど私にとっては、学生たち楽しげな姿よりも、社会でもまれ、戦いながらも、人生を謳歌しようと支えあっている姿の方が、ずっと美しいと思った。

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皐月彩